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Posted by のらんば長崎運営事務局 at

2010年04月29日

長崎平戸/映画「幸橋」:原作(6)

~幸橋(6)~

無言で食事をする七海と邦夫。
テレビの音だけが空しく響くリビング。
テレビでは報道番組の中のスポーツ情報が流れている。
そこに、弓道全国大会で堂々の準優勝に輝いた、土屋隆二の
ことが報じられていた。

××× テレビ画面 ×××

「長崎テレビ・報道の佐々木です。昨日開かれた、全国弓道大会
で堂々の準優勝に輝いた土屋隆二さんに今夜はスタジオに来て
いただきました。土屋さん、準優勝おめでとうございます。」
「あっ、ありがとうございます。」
「いや~全国大会で堂々の準優勝ということで長崎県の誇りです。
早速ですが昨日の大会の喜びを語っていただきたいと思いますが
その前に昨日の大会の模様をVTRにまとめましたからご覧になっ
ていただいてから、たっぷりと土屋さんの喜びの声をお聞きしたい
と思います。では、VTRどうぞ!」


××× 大会のVTR ×××

VTRが流れる中、邦夫はその雰囲気を感じとっている。
七海はチャンネルを途中で変えようとする。

「なんかお笑いでもやっとらんかな~」
「変えるな。」
「隆二の顔をみても仕方ないけん。」
「つけとけ!」


七海は仕方なくチャンネルをそのままにしておく。
弓道を止めてしまった七海にとって、弓道大会の報道は辛い
ものがあった。まして、高校時代を同じ弓道部で戦ってきた友
人が全国準優勝の報道となると更に辛さが増してくる。
邦夫は、ただ黙ってその報道の様子を伺っている。

やがてVTRは終わり、画面はスタジオに戻された。

「いや~何度みてもいい試合ですね。この喜びを一番誰に伝え
たいですか?」
「そうですね。地元の親友たちで、その中には高校の時に同じ
弓道部の仲間もいるんです。」
「おや、同じ弓道の仲間もいらっしゃるということで。その方は
まだ続けていらっしゃるんですか?」
「最近はあまりやっていないようで・・・彼女はとにかく目がよく
抜群の腕なんで続けていれば全国優勝も間違いないんですけ
どね・・・。」
「女性の方ですか?・・・もしかして彼女だったとか?」
「いや~~・・・今じゃ、僕の親友の奥さんですよ。はははは。」


邦夫はじっと番組の様子に聞き耳を立てている。
昔からお調子者の隆二はベラベラ喋り捲り、それに呆れる七海
は途中でテレビを消してしまう。

「ったく。隆二は相変わらずで困ったもんばい。」
「・・・やりたきや、やってもよかぞ。」
「えっ?・・・・弓道なんて昔の話。やり方も忘れたし、全くやる気
もなか。」
「無理すんな・・・俺に気を使うな。」
「無理なんかしとらんし、邦夫に気を使って止めたわけでもなかと。
高校のときみたいに魅力もなかし、体力もついていかんし、もうお
ばさんバイ。はははは。」


急に口調がきつくなる邦夫。

「そういうところが気を使いよるって言いよろうが!」
「邦夫・・・だから違うって。」
「いい加減、俺に同情するように振舞うのを止めろ!お前はオマエ
で好きなことば堂々とやればよかたい!俺はオレで好きに生きる
けん。」
「・・・・・そんなこと言わんでよ。」


更に重苦しくなっているリビング。
そこへ同級生で漁師の大垣誠から電話がかかってくる。
電話に出る七海。

「はい、伊藤です。あっ、誠。テレビ?あぁ~見た見た。まったくね
~・・・邦夫?おるよ、ちょっと待ってね。」


七海は電話を保留にして邦夫に受話器を渡す。

「誠から。」

邦夫は無造作に受話器を受け取り、無愛想にでる。

「なに?」
「なんや?愛想なかね~・・・隆二のテレビ見たや?」
「見えるわけないやろうが。」
「あっいや、そういう意味じゃ・・・。」
「どういう意味や!お前バカにするために電話してきたとか!」


邦夫は、ムッとして思いっきり受話器をテーブルに叩きつける。
叩きつけられた音に、誠は電話の向こうでびっくりしている。

「うわっ!・・・耳、痛っ!」

七海はすぐに受話器を拾い誠に誤る。

「誠、ごめんね。またね・・・。」

誠は受話器を持ったまま呆然としている。

「う~~ん、まいったね・・・あいつなんとかせんといかんな・・・。」

誠は、事故以来卑屈になってしまった邦夫が気がかりで仕方が
ない。邦夫は、そんな友人達の思いとは裏腹に卑屈な毎日を
ただただ過ごすだけであった。
そんな邦夫を見るに耐えない七海である。

                           >次回につづく



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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 23:04Comments(0)映画

2010年04月26日

長崎平戸/映画「幸橋」:製作実行委員会宮崎支部

~製作実行委員会宮崎支部~

この度、宮崎県に製作実行委員会宮崎支部を設立していただく
ことになりました。
代表に50代半ばの「ストリートミュージシャン:ミッキー大野さん」
が就いていただくことになりました。
ミッキーさんは、数々のライブをこなす傍ら「フォークビレッジ」と
いうアコースティックギターで歌って飲める店のオーナーでもある。



「フォークビレッジ」
http://www15.ocn.ne.jp/~no109/
場 所:宮崎市中央通8-9西エビスビル1F
連絡先:0985-28-7601
定休日:毎週 月曜日



【ミッキーのポリシー】
「こんな大変な時代だからこそ、40代、50代の人たちに頑張っ
 て欲しい。僕は歌を通じて、この思いを伝えたい。」

とミッキー大野さんは語る。
1955年10月9日生まれ
1975年19歳で上京。
1981年、26歳ストリートデビュー。
東京の下北沢、渋谷、新宿で活動後、1995年宮崎へ戻り、
約1100曲のレパートリーを武器に、県内各地でのライブは基より、
ボランティア活動や、宮崎サンシャインFM「ミッキーのフォークビレッジ」
(FM76.1)のパーソナリティーとして、また、若手育成を始めとする
音楽空間プロデューサーとしても活躍中。


ミッキー大野さん
現宮崎フォークアソシエーション会長
ライブや講演会の出演依頼などのお問い合わせは
HotLINE 090-8413-9500
mickey.cco-mfa109@ezweb.ne.jp
ミッキー大野さんブログ:獅子王ワールド
http://6024.teacup.com/riricon/bbs


また、ミッキー大野さんは「宮崎サンシャインFMのフォークビレッジ」という
コーナーのパーソナリティーも務めている。


毎週土曜日17:00オンエアー
http://www.sunfm.co.jp/micky/


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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 22:32Comments(0)映画

2010年04月22日

長崎平戸/映画「幸橋」:原作(5)

~幸橋(5)~

邦夫は毎日悶々とした日々を過ごしていた。
特にやることもなく、というより何もやる気がない。
やる気が起こらないと言ったほうがいいかもしれない。
一人では外へも出れない身体になってしまった自分を憎らしく
思い、その感情をどこへぶつけていいのかもわからず、身近に
いる七海に、つい当たってしまう。内心、七海には悪いと思いな
がらも自分の感情をどうすることもできない。悔やんでばかりの
毎日である。時々思い出してしまう、あの忌まわしい事故・・・・。
今日もその記憶がよぎってしまう。

××× 東京の撮影スタジオ ×××

高いスタジオの天井から俯瞰撮影をしている邦夫。
大手広告の全国ポスター撮影をしている。
カメラマンとして、やっと売れ始めた邦夫は一つひとつの撮影を
とても大事に丁寧にこなしてきた。この日も、全国ポスターという
こともあり、昨夜から入念な準備をしてきて多少寝不足ぎみであ
るが、決して手を抜くことはしない。撮影も順調に進み中盤までさ
しかかったころ、邦夫はカメラチェンジのため状態をうごかした。と、
その瞬間足を踏み外してしまった。

「あっ!うわ~~~~~ぁぁ!」

”どさっ”、一瞬のうちに鈍い音がスタジオ中に響き渡り、暫くして
スタジオ中で悲鳴と邦夫のうなり声が震えている。
地面に広がる大量の血。邦夫の身体はあらぬ方向へ曲がってし
まい、見るに耐えない姿に変わってしまった。

  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

二度と思い出したくない記憶に悩まされる邦夫。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・。」

悔しそうに、頭を抱え込んでしまう邦夫。
邦夫は、そんな繰り返しで毎日を悶々と過ごしている。
いつの間にか外はすっかりと暗くなり、邦夫の部屋も電気を点け
てないため真っ暗である。もっとも、光を失った邦夫にとって電気
が点いていようがいまいが関係のないことであった。
そんな中、家の外では車の音が聞こえてきた。七海が仕事を終え
戻ってきたのだ。その外の様子に、邦夫は少し反応するが動こう
ともしない。やがて七海は邦夫の部屋をノックする。

「邦夫、ただいま。中におる?」

邦夫は全く返事を返そうともしない。

「ねぇ、入るよ。」

七海は暫く邦夫の返事を待つが、全く返事がないので痺れをきらし
部屋の中へ入る。七海は部屋の中へ足を踏み入れた瞬間痛みを
覚えた。

「痛っ!」

邦夫が投げつけて割れた写真立てのガラスに上ってしまった。
七海は足もとに気をつけながら、真っ暗な部屋の中へ入ってくる。
邦夫は、壁にもたれかかり憂鬱な顔をしている。

「電気つけるよ。」
「電気?・・・俺には関係ないやろう?電気を点けても点けんでも変
わらん。いつも真っ暗たい。」
「・・・・そんなつもりで・・・・。」


それ以上、何も言えない七海。暫くして邦夫が口を開く。

「七海・・・・・お前、実家に帰ってもよかぞ。」
「えっ?」
「俺を世話しても、何もよかことはなか・・・お前まで苦労することは
なか。俺は一人でなんとかする・・・。」


一瞬戸惑う七海だが、わざと元気なふりをする。

「はははは・・・なんば言いよるとね。・・・・・あっそうそう隆二が大会
で頑張りよるらしかよ。昔から強かったからね。」
「・・・俺と別れれば、好きな弓道を思いっきりできるたい。」
「なんでそんなこと言うと?・・・・・さっ、ごはんにしよっか。今日は
邦夫の好きなイカの刺身。誠に安く譲ってもらったとよ。今年はイカ
が大漁で大もうけ、って。今度みんなにおごるって。」


邦夫は全く返事しようともしない。七海は、床に散らばったガラスを
片付けながら

「ガラス割れてしもうたね、邦夫はケガしとらん?大丈夫?・・・・・
じゃ、ごはんできたら声かけるね。すぐにできるけん。」


七海はごはんの準備に部屋を出て行く。邦夫は相変わらず壁に
もたれかかり全く動こうともしない。


                           >次回に続く



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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 16:37Comments(0)映画

2010年04月21日

長崎平戸/映画「幸橋」:原作(4)

~幸橋(4)~

~平戸観光協会(外)~

バカップルは大はしゃぎで去り、疲れきった七海は事務所の外で
膝を丸め座り込んでいる。そこへ吉田がやってくる。
吉田は、七海に缶コーヒーを差し出す。

「どげんした?」
「(コーヒーを受け取り)あっ、ありがとうございます。」
「今日はヒマやけん、もうよかよ。早く帰って少し休んだほうがよか。」
「いや、大丈夫です。」
「大丈夫じゃなか。・・・・・・・邦夫君は元気か?」
「・・・・・はい・・・・。」
「・・・そっか。」


吉田は、多くは語らない七海の辛い状況が手に取るに分かっている。

「そういえば、土屋君って君たちの同級生やったよね?」
「えっ?そうですが。」
「彼、すごかね。弓道大会で大活躍しよるね。今日も新聞に出とるよ。」
「隆二が?」
「なんね?知らんやったと?ほれ。」


吉田は、隆二が掲載されている新聞を七海に渡し

「あっ。」
「弓道・・・・もう一度始めたら?」
「・・・・・。」
「邦夫のためにも・・・・・。なっ、やったほうがよか。」
「・・・・・・いまは・・・。」


吉田の言葉にためらってしまう七海。
今は、とても弓を持つ気力も精神的な余裕もなかった。


~常灯の鼻(じょうとうのはな)~

400年前の石垣がそのまま残る灯台後。
事務所を出た七海は、石段に腰掛け鮮やかな海を見つめている。
七海は、思い出したくもない過去の記憶がよみがえってくる。

××× 病 室 ×××

心電図の”ピッピッ”という音。
全身包帯に巻かれた邦夫がベッドに横たわっている。
傍には、七海が邦夫の手を握り締め悲しそうにしている。

××× 診察室 ×××

「ご主人は、多発性骨折、出血性ショック。全身折れていない骨
を探すのが大変なくらいです。出血もかなりひどく臓器がショック
症状を起こしています。全力は尽くしますが、あの高さから落ちた
んだ・・・・・万が一のことも考えておいてください・・・・。」
「・・・・そんな・・・。」


××× 病 室 ×××

ベッドに横たわる邦夫の顔を辛そうに見つめる七海。
七海は邦夫の手を握り締め呆然としている。
何日も昏睡状態が続き、七海の精神状態も限界を越え、諦めの
気持ちが湧き上がり始めた・・・・。と、そのとき握り締めた邦夫の
手が”ぴくっ”と微かに動いた。

「・・・邦夫?・・・邦夫。わかる?私よ、七海よ!・・・邦夫。邦夫!」

必死に名前を呼び続ける七海。その声に応えるように邦夫の目が
ゆっくりと開いていく。微かに邦夫の口元が動いている。

「・・・・うっ、痛っ・・・。」
「邦夫!私がわかる?」
「・・・・うぅ~・・・・くらい・・・・・・・暗い・・・・。」
「えっ?なに?・・・邦夫?」


  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

七海は、我に返り”常灯の鼻”の石段からゆっくりと立ち上がり車
の方に向っていく。
車に乗り込んだ七海は、ルームミラーで自分の顔を見つめる。
しばらくして、ミラーに映った自分の目の周りを触っている。
またも、忌まわしい記憶がよみがえってしまう。

××× 診察室 ×××

「一生ですか?」
「はい。一生、光を感じることもできません。二度とカメラを覗くことも。」
「・・・手術・・・手術すれば見えますよね。ねぇ先生。私の目。・・・・
私の目・・・私の目は片方でもいい。先生、私の目の角膜を移植して
ください!」
「お気持ちはわかりますが無理なんです。右目は網膜はく離で完全に
ダメ、左目は瞳孔は大丈夫でも視神経が萎縮していてダメなんです。
角膜を移植しても見えないんです。」
「・・・そんな・・・彼の目は大事なんです。」
「とにかく今は、目よりも命を取り留めることが大事なんです。」
「・・・・そんな・・・・。」


  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

七海は、ミラーに映る疲れ切った自分の姿を見て深いため息をつく。

「ふぅ~~・・・。」

気を取り直し、エンジンをかける七海。

                    >次回につづく



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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 20:51Comments(0)映画

2010年04月21日

長崎平戸/映画「幸橋」:原作(3)

~幸橋(3)~

~高校時代の七海と邦夫(七海の回想)~

幸橋の上で、弓を片手に少し照れながらポーズを決めている七海。
邦夫はカメラを構え、七海の写真をどんどん撮っている。

おっ、そのポーズもよかね~。う~ん、ナイスナイス。」
「もう恥ずかしいから止めようよ。」
「あっ、その困った顔もよか。最高!」


恥ずかしそうにしている七海に構わず、邦夫はどんどんシャッターを切っていく。
邦夫は途中、七海の胴着の帯に付けられたキーホルダーに目がいく。
キーホルダーの中の写真は七海の笑顔。

「あれ?これ。」
「うん。この間撮ってもらった写真。うちの宝物にする。」


とても恥ずかしそうな七海。邦夫も照れながら。

「われながら・・・かわいく撮れとると思う。」
「うん。」


邦夫はしばらくして、戸惑いながら

「・・・おれさ、東京に行こうかと思うとる。」
「東京?」
「カメラマンになる!一流のプロになって平戸に錦を飾るとが夢たい!」
「えっ~~、カメラマン?」

  
  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

そこへ女性の声がかぶってくる。

「すみません、平戸のおすすめってどこ~?」

~七海が勤務する平戸観光協会~

昔のことを思い出している七海は、その女性の声に全く気づいていない。
都会から観光に来た若くてチャラチャラしたアベックが七海の目の前にいる。
アベックの女が再度、七海に声をかける。

「ねぇ!おすすめの観光はなに?」

七海は、やっと我に戻りアベックの存在に気づく。

「あっ、すみません。何かお探しですか?」
「なにかじゃなくてさぁ、マーたんが観光名所のいいとこないか、さっきから聞
いてんじゃん。」
「マーたん?」
「あっ、うちのことね。ねぇ~~ひろポン。」
「ひ、ひろポン・・・ですか?」


七海はバカップルのやりとりに呆れている。女が更に話しかけてくる。

「ねぇ、うちらどこにいけばいいの?どうしたらいいの?」
「なんかさぁ、こうパァ~としてグゥ~とくるものない?」
「・・・パァ~としてグゥ~・・・ですか、そうですね・・・この上にある平戸城とか
観光資料館にある『じゃがたら文』とか、おすすめですが。」
「なに?その『じゃがたる・・・なんとか』って?」
「おっ、なんかうまそうじゃん!」
「いや、食べ物じゃなくてですね、江戸時代にイタリア人と日本人の混血人で
お春という女の子が住んでいたんですが、鎖国政策でジャカルタに追放されて
しまい、日本を恋しく思って、その思いを手紙にして日本に送ったものが『じゃが
たらお春』の『じゃがたら文』といって、ある日突然平和な生活を断ち切られ・・・」


つまらなそうに七海の話を聞くバカップル。女の方があくびをしながら七海の話に
入ってくる。

「ふぁ~~、よくわかんな~い。ねぇ~ひろポン、この人わけわかんな~い。」
「だよな~~、なんか別なのないの?」
「これ、これ見て下さい。この写真が『じゃがたら文』で・・・」


男は「じゃがたらお春」と書いてある別の焼酎のチラシを見つけ

「あっ、これじゃないの?」
「本当だ、な~んだ焼酎のことだったのね。きゃ~おいしそう!」
「いや、焼酎のことではなくてですね。こちらの写真が・・・・」


七海は必死に説明するが、バカップルは「じゃがたらお春」の焼酎だけを見ている。
まいった表情の七海。そこへ七海の上司、吉田浩平がやって来る。

「お客様、その焼酎に会う食べ歩きはいかがでしょうか?平戸はヒラメと平戸牛が
名産なんですよ。」


その言葉にバカップル二人とも即反応する。

「それ、ちょ~~いいんじゃない?ねぇひろポン。」
「そうだね。マーたん。」


やり切れない七海、その傍で大はしゃぎのバカップル。


                        >次回につづく



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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 13:59Comments(0)映画

2010年04月20日

長崎平戸/映画「幸橋」:原作(2)

~幸橋(2)~

窓の外に海鳥や漁船が見えるリビング。
七海と夫の邦夫が朝食をとっている。
七海はたまに邦夫を見るが、邦夫は全く気にかけようともせず
黙々と会話もなく重い空気が流れている。
暫くして邦夫がテーブルの上の醤油を取ろうとするが、いつも
の場所になく醤油瓶を取れない。手を左右に動かし醤油を探す
邦夫。やがてイライラしながらテーブルを乱暴に叩く。

「おい!醤油は!」
「あ~、ごめんごめん」


七海は邦夫の罵倒にもめげず、明るく振舞いながらキッチンへ
醤油を取りにいく。邦夫はそんな七海に向かって更に罵倒する。

「いつもの場所に置いとけよ!いつもの場所に」
「は~い」


七海はキッチンから明るい声で返事をする。
七海は、邦夫からいくらキツイ言葉を浴びても邦夫の前では常に
明るく振舞うようにしている。そんな七海に邦夫は容赦なく理不尽
な言葉を浴びせる。

「自由に動けてよかね!お前は!」
「はい、醤油。」


キッチンから戻った七海は、邦夫の手に醤油瓶を握らせる。
しかし、邦夫は七海の手を思いっきり振り払ってしまい、その拍子
に醤油瓶は吹き飛び床に転がってしまう。
床はあっという間に醤油が広がり、黒く染まってしまう。

「メシはもうよか!」

邦夫は激しく立ち上がり、手探りでリビングを出て行ってしまう。
途中、何度か躓きそうになる邦夫を心配して七海は手を差し伸べる
が、邦夫はそれを振り払いおぼつかない足取りで自分の部屋へ戻っ
ていく。そんな邦夫に言葉をかけられない七海。
普段、七海は無理して明るく振舞ってはいるが、邦夫の態度にやる
せない表情を見せる。

床に広がった醤油を辛そうに拭く七海。

  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

邦夫は部屋にこもり、額に入っている写真を触って何かを感じよう
としている。
その写真は、二人が高校のときに邦夫が撮った七海の笑顔。
そこへ、七海がドアをノックしてくる。

「邦夫?」
「・・・。」(全く返事をしない邦夫)
「・・・会社行ってくるね。」
「・・・。」
「・・・じゃぁね。」


暫く返事を待つが邦夫からの返事はなく、七海は空しそうに部屋を後
にする。邦夫は、触っていた写真を思いっきりドアの方へ投げる。
写真は勢いよくドアにぶつかり、額のガラスが床に飛び散る。

「くそ!」

邦夫はそういって床に仰向けになってしまう。
割れたガラスの中に、高校時代の七海が笑っている。


                       >次回につづく



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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 19:20Comments(0)映画

2010年04月20日

長崎平戸/映画「幸橋」:原作(1)

~幸橋(1)~

弓道道場に佇む一人の少女。
軽く呼吸を整え、ゆっくりと弓を構える。
少女の目は鋭く、遠くにある的の一点を狙っている。

少女はさらに呼吸を整え、弦を力強く引き全神経を的に集中させる。
暫くの静寂のあと、一瞬のうちに勢いよく矢は放たれ的の中心に鋭く
突き刺さり”スパーン”という音が道場に響き渡る。

高校時代、七海は弓の名手と期待されていた。

  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

透き通る海。白い砂浜。
それに沿って真っ直ぐに伸びる道。

そこに七海が運転する車が走り抜けていく。
後部座席には弓道用具が置かれてある。
その弓道用具には、七海の笑顔の写真が入ったキーホルダーが
付けてある。

紺碧鮮やかな平戸港。
太陽に照らされ、光り輝く水面。
港の小船が波に揺れ動いている。
七海の車がゆっくりと、その港を走り抜けて行く。

ルームミラーに写る七海の顔。
フロントガラスには幸橋が徐々に近づいている。
幸橋の前を通り過ぎる寸前に昔の思い出がフラッシュバックする七海。

  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

朱に染まる夕方、幸橋の真ん中で一人の少女が弓を構えている。
「もっと笑って」と橋の下にカメラを構えた少年の影。
その横に別の少年二人が満面の笑顔で佇んでいる。
「お~ぉ、その顔よかね~」と言いながらシャッターをおもむろにきる少年。
それにこたえ、嬉しそうに手を振る少女。幸せに満ちた少女の笑顔。

その写真は、今もキーホルダーの中で笑っている。

  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

幸橋を過ぎた辺りで、七海は急に車を止める。

七海は、弓道用具に付いているキーホルダーを見つめ軽くため息をつき、
そしてゆっくりと幸橋の方へ振り返る。
そこには、高校時代の七海たちが幸橋の上で満面の笑顔で佇んでいた。
・・・・・今の七海には、そう感じられた。

                
                                  >次回へつづく



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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 17:17Comments(0)映画

2010年04月19日

長崎平戸/映画「幸橋」:主な登場人物

~主な登場人物~

●伊藤 邦夫(30)・・・盲目のカメラマン
  地元・平戸の高校卒業後、カメラマンを目指し上京。
  厳しい修行にも耐え念願のカメラマンになり、毎日が充実した日々を送る。
  一緒に上京した、恋人の七海とやがて結婚をし、さらに幸せな日々を過ごしていた。
  があるとき、不慮の事故に遭遇し今までの生活が一変してしまう。
            
●伊藤 七海(29)・・・邦夫の妻、弓の名手                      
  平戸の高校を卒業後、恋人・邦夫と上京。
  カメラマンを目指す邦夫を献身的に支えてきた。
  念願である邦夫と結婚をすることができ毎日が幸せな日々を過ごす。
  しかし、邦夫の事故により七海の生活も一変してしまった。     
    
●土屋 隆二(30)・・・邦夫、七海の親友
  邦夫・七海の幼馴染。
  小学校から高校まで、ほぼ同じ時間を過ごした仲。
  邦夫が事故を起こし帰郷した後、親身になって邦夫・七海のために
  尽くしていく。邦夫の人生を大きく変えるチャンスを与えていく。
 
●大垣 誠(30)・・・邦夫、七海の親友
  邦夫・七海の幼馴染。
  小学校から高校まで、ほぼ同じ時間を過ごした仲。
  隆二と同じく、邦夫たちのために必死に尽くしていく。  

●吉田 浩平(51)・・・七海の上司 
  七海が勤務する「平戸観光協会」の上司。
  邦夫の事故以来、気落ちしてしまった七海のよき理解者。
  何でも相談にのれる頼りがいのある上司。 

●六曜館マスター(42)・・・喫茶店マスター
  邦夫・七海たちが昔からよく通った喫茶店。
  マスターは天然な性格で自然体。
  人の面倒見がとてもよく、邦夫たちの兄貴的存在。

●福田 正子(62)・・・七海の母親 
  七海のよき理解者。
  夫(七海の父親)は、七海が平戸を離れ上京後に病気のため他界。
  その後は、妻である七海の母が造り酒屋を切り盛りする。

次回から、原作「幸橋」を徐々にアップしていきます!
               

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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 22:14Comments(0)映画

2010年04月18日

長崎平戸/ 映画「幸橋」:新あらすじ

~あらすじ~

このたび、新しく脚本「準備稿」完成しました。
ほぼ完成状態で「決定稿」で若干の修正はあるかもしれませんが
「決定稿」に近い仕上がりになりました。
今回、その「あらすじ」をご紹介します。


  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

平戸市。
四方を海に囲まれた風光明媚で異国情緒溢れる小さな島。
七海は、この島で生まれ育ち多くの友人たちと高校までを過ごす。
高校時代は弓道部に所属し、将来有望な弓の名手として期待されていたが、
ある事件から弓を持つことをためらうようになってしまった。

七海は高校を卒業すると、恋人・邦夫と共に平戸を離れ上京。
邦夫は東京でカメラマンを目指し、厳しい修行にも耐え念願のカメラマンに。
七海は、そんな邦夫を献身的に支え二人は晴れて結婚。
念願のカメラマンになった邦夫を支えることに生きがいを感じ、毎日幸せな日々
を過ごす七海。・・・・・しかし、その幸せは長くは続かなかった。

ある日、邦夫は大手広告ポスターの撮影中に誤って足を滑らせて高さ20mも
あるスタジオの天井から墜落してしまう。
一命は取り留めたが、全身骨折・臓器のダメージも大きく昏睡状態が長く続く。
事故から3ヶ月、奇跡的に意識を回復した邦夫だが自由が利かない体に加え、
カメラマンにとって一番大事な”光”を失うというハンディを背負うことに。全盲に
なってしまった邦夫は毎日の生活にも張りがなくなり、七海の人生も一変して
しまった・・・・・。二人は東京を捨て故郷である平戸に戻るが、そこでの生活は
毎日が悶々として二人の仲もギクシャクとして2年を過ぎようとしていた。
その間、邦夫はほとんど外に出ることはなかった。

 そんなとき、幼いころからの友人・隆二と誠が光を失った邦夫に「もう一度写
真を撮れ!」と、そして弓を持つことを止めた七海に「もう一度弓を持て!」と、
無謀ともいえる言葉を口にする。そんな友人たちの言葉に戸惑いと苛立たしさ
を感じる邦夫・・・・・。そして悩み続ける七海。

ここから新たな二人の葛藤がはじまる・・・・・。



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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 18:46Comments(0)映画

2010年04月13日

長崎平戸/映画「幸橋」:サポーター募集チラシ

~サポーター募集チラシ~サポーター募集!!
映画「幸橋」製作実行委員会では、今回の制作に関して募金協力のお願いをしております。
このチラシ(裏表二面)を活用し、多くの方々のご協力を募っています。
多くの方々と共に、映画「幸橋」の完成を目指してまいりたいと思います。


 ◆チラシ表◆ 



 ◆チラシ裏◆ 



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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 00:35Comments(0)映画

2010年04月09日

長崎平戸/映画「幸橋」:宮崎サンシャインFM 76.1MHz

~映画「幸橋」について生電話インタビュー~


先日、宮崎サンシャインFMの「ミッキーのフォークビレッジ」というコーナーの
パーソナリティー”ミッキー大野さん”より、番組収録中に”生電話インタビュー”
を受けました。
生電話インタビューということで、妙にドキドキ
face08icon10してしまった。
インタビューは、この映画「幸橋」のサポーターについて、また熱き思いを語って
下さい、とのことでしたが緊張して何をどう語ったのか・・・・
icon11不安・・・・・face07
この放送は、4/10(土)17:00から「宮崎サンシャインFM 76.1MHz」でインタネ
ットでも視聴できます。是非、聴いていただければ幸いです。

「宮崎サンシャインFM 76.1MHz」
http://www.sunfm.co.jp/

おかげさまで、この取材により宮崎に「映画幸橋製作実行委員会宮崎支部」を
立ち上げていただけることになりました。

今後、制作に向けますます頑張って参ります。


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Posted by 幸(さいわいばし)橋 at 17:28Comments(0)映画